現在のギター塗装について


 あまりにも外見上の品質に固執していすぎると思われる。本来ギターの品質は音であるべきであろう。ポリサン(*1)で下地、ワックスポリ(*2)で上塗りでは,塗膜は1ミリ位になってしまってもおかしくない。実際リフィ二ッシュのときなどたまに目にする。私は塗装が木を締め付ける力は、硬度と厚さに比例すると考えている。(塗料は縮もう縮もうとする性質がある。)
 厚く吹いた塗膜を均一に薄く研ぎあげるのは不可能だ。仮に薄くなるように研磨すればオーバーサンド(*3)しやすくなり、厚く吹いた意味がなくなってしまう。またそのために膨大な時間を使わなくてはならない。ガラスのような光沢や、蛍光灯が歪んではならない等と言っているのはギターのような形をしたものを造っているに過ぎないと考える。ギターは手にした時、あるいはステ−ジで使ったときに音で1番輝いてほしいと思っている。
 塗料自体の価格はポリエステルが1番高い、次いでウレタン、ラッカーの順だ。しかしポリの場合は、その圧倒的な作業性のよさとリスクの少なさがコストダウンに大きな役割を果たしている。ラッカーの価格は比較的安価なのだが、極めて悪い研磨性、作業性が価格を引き上げている。あまりにもランニングコストがかかってしまうのだ。ウレタンはその中間といったところ。
 ギター塗装は楽器として仕上げるか、見て楽しむかでその仕様は大きく違う。
 ポリエステルは材料の良し悪しを選ばないので、通常3ピース材(*4)や4ピース材、悪い意味で抜けてしまった材等に適している。良質の材にポリ仕上げでは材のよさを無視した仕様といっても過言ではない。高級品であればポリは避けるべきだと私は考えるのだが............。
 ウレタンは2ピース材や材の良いものに向いている。アコ−スティックや高級機にその透明度のよさと耐久性のよさは秀逸だ。ただし薄く仕上げること!
 ラッカーはその独特な風合いに特徴がある。後に詳しく述べます。



塗装はよく化粧に例えられる。
 ポリは原形をとどめない厚化粧。
 ウレタンは美しさをより強調した感じの薄化粧。(吹き方や厚みにもよるが)
 ラッカーは、う〜んなんと表現したらよいのか難しい。


―――*マークの説明―――
*1 ポリサン  ポリエステルサンジングシーラーのこと。どろどろのこの塗料を口径の大きいガンでスプレーする。
*2 ワックスポリ  ポリエステルクリヤーでワックスタイプとノンワックスタイプがある。ワックスタイプはパラフィンが浮くように吹か
   ないと硬化不良を起こす。
*3  オーバーサンド  研磨のし過ぎで下地の色や生地まで剥けてしまう事。
*4 3ピース材  通常は2ピース材を使うのが一般的。ソリッドギターの場合3,4枚の材を貼り合わせて一枚の材として使うことが良くある。