独り言


現在のギター塗装の問題点

目やせやラッカーのクラッキングが許されない事。(認識不足や説明不足が大きいのだが)木は生き物であり呼吸をし動くもの。塗装はうすく仕上げることが一番大事だ。しかし、日本の気候の変化から木部を保護するとなると、ある程度の塗膜は必要であろうと考えられる。個人的には0.3mm以内と考える。木を締めずに木の持つ能力を妨げない塗装をすれば目やせは必然的に起こるのだ。クラッキングにしてもこれはラッカーの特性であり、綺麗なクラックが入ったら逆に喜ばしいことなのだ。楽器の塗装は『木を保護する力』があればよい。うすさと硬度が大事!その上で綺麗だったり、蛍光灯が歪まずに映る(無理だけど)等、外見上の品質向上をめざすのが本当だと思う。
              

 部分修理などの場合、境目ができやすい。これは新しく吹いた塗料と既存の塗料との硬度の差、あるいは乾燥の差であったりする。車のようにフェンダーとドアの隙間で切るといったような作業ができないので、不自然さが出やすいのである。調色にしても簡単ではない。基本カラーを全て揃える事は不可能に近い、染料、顔料、エナメル、メタリック、パール等でよく使うものを揃えるしかないのだ。車のように○○社の○○年製の○○○の色はこれ!みたいな塗料は無いので調色は困難を極める。車の場合は全ての車種の色見本帳があるが、ギターは写真とかカタログ、雑誌でしか色を判断するものが無いのが現状だ。しかしこれらのサンプルでは色味がまったく違ってしまう場合が多い。印刷物のインクと塗料とは違う事を認識してほしい。『部分修理のほうが丸吹きより時間や手間がかかってしまった』なんてことも決して珍しいことではない。

 ギターはその価格が比較的安価な物が多いので、塗装料金も安くできると思われがちだ。車でも、ギターでも基本的には作業工程はあまり変わらない。車は保険で直すことが多いので痛みを感じないだけなのだ。一寸直せば数万円なんて事もある。ギターの場合は個人負担になってしまうので高いと感じてしまうのだと思う。ギターの部分修理とかリフィニッシュは、量産品とは違いその1本のために時間を割かなくてはならないのだ。実際にこの仕事に携わってみて、作業の難しさを考えると非常に安価であると感じる。